日本皮膚科学会雑誌
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コラーゲンゲル内における新生児マウス毛包の培養
松本 克夫横山 由紀子鈴木 正巳中野 博行
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1993 年 103 巻 2 号 p. 103-

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抄録

新生児BALB/cマウス皮膚をコラゲナーゼ処理することにより単離した毛包を,I型コラーゲンゲル内に包埋し,種々のCa2+濃度の培養培地にて培養した.高Ca2+条件(1.82mM)では毛包のDNA含量,DNA比活性は培養2~3日から7日目にかけて急激に低下し,毛包組織の辺縁部への〔3H〕-Thymidineの取り込み量も減少することがミクロオートラジオグラフィーにても示された.このとき,毛包は三次元的な構造を維持していた.一方,低Ca2+条件(0.01mMあるいは0.2mM)では,DNA含量は一定値を維持し,DNA比活性も高い値を維持した.しかしながら,毛包から細胞がアウトクロースし,三次元的な構造は崩壊した.高Ca2+条件にて培養された5日目の毛包は,ヌードマウスに移植すると毛再生を示したが,低Ca2+条件にて培養された毛包は毛再生を示さなかった.このことから毛再生が誘導される際の毛包の三次元的な構造の重要性が示された.高Ca2+(1.45mM)および低Ca2+(0.02mM)条件にて培養される毛包のDNA比活性およびDNA含量に及ぼすMinoxidilおよびTPAの影響を,培養5日間にわたり検討した.Minoxidilは高Ca2+条件ではDNA比活性,DNA含量の低下を100μg/ml濃度で抑制し,低Ca2+条件では濃度に依存した形で両方の値を増加させた.TPAは培地中のCa2+濃度に係わらずその100ng/ml濃度で培養2~4日間にDNA比活性を高い値に維持した.本培養系は毛成長作用を有する薬剤を評価するのに有用であると結論する.

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© 1993 日本皮膚科学会
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