日本皮膚科学会雑誌
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HIV感染者におけるKaposi肉腫―20例の臨床的,組織学的検討―
赤城 久美子増田 剛太根岸 昌功味澤 篤小池 盛雄
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1996 年 106 巻 8 号 p. 1071-

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抄録

1986年から1995年6月までに都立駒込病院を受診したHIV感染者は456人,うちAIDS患者は129人であった.そのなかで経験したKaposi肉腫20例について臨床的,組織学的に検討した.Kaposi肉腫の発生率は15.5%(日本人16.5%)であり全例男性で同性愛者が80%を占めた.診断時CD4陽性細胞数は平均41.5/μlで免疫能の低下が目立ち,診断後の平均生存期間は44.9週と非常に短かった.腫瘍の発生は皮膚に95%,口腔に40%認められた.皮膚のKaposi肉腫は特に好発部位がなく,全身どの部位にもほぼ同率に発生していた.治療は放射線療法を6例に施行したが,有効(Partial Response)および著効(Complete Response)が4例で重篤な副作用がなく,限局した病変には第一適応となる。化学療法は3例に行い一時的な寛解をもたらしたが生命的予後は改善していない.早期の凍結療法は整容的見地から積極的に試みてよい.病理組織学的には,紡錘形細胞が管腔を形成して不規則に増殖する病変がみられ,一部の細胞の内外にPAS陽性の硝子体(hyaline globule)が認められた.免疫組織学的検索は第Ⅷ因子関連抗原、UEA-Iレクチン,CD34抗原について行った。第Ⅷ因子関連抗原は管腔形成部と一部の紡錘形細胞で陽性所見を示した.またUEA-Iレクチンは管腔形成都に陽性,一部の紡錘形細胞に弱陽性の反応を示した.一方CD34抗原は血管内皮細胞,紡錘形細胞ともに強い発現が認められた.AIDSは現在増加の一途をたどっており,二次性悪性腫瘍として重要なKaposi肉腫の治療と組織診断学について,今後のさらなる検討が望まれる.

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© 1996 日本皮膚科学会
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