日本皮膚科学会雑誌
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亀頭冠の尖圭コンジロームにhuman papillomavirus type6b,亀頭部のボーエン病および陰嚢部のボーエン癌にhuman papillomavirus type 33の感染がみられた1例
照屋 操上里 博稲福 寿史上原 啓志野中 薫雄安里 剛大城 稔
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1999 年 109 巻 11 号 p. 1613-

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抄録

我々は,亀頭部に尖圭コンジロームおよびボーエン病を合併し,陰嚢部にボーエン癌がみられた63歳男性の症例を報告した.亀頭冠に沿って紅灰白色の疣状の丘疹が多発し,その組織所見では構成する細胞には異型性がみられず,表皮細胞の増殖がみられ,典型的な尖圭コンジロームであった.また亀頭頸から亀頭部にかけて,淡紅色の境界が明瞭な中央にびらんのある局面がみられ,その組織所見は,表皮全体の細胞の構築に乱れがあり,核は異型性に富み,ボーエン病に一致していた.左陰嚢部の皮疹は,大きさが30×25mmで境界が明瞭な淡紅色の扁平の皮疹を呈し,一部にびらんも認められた.その組織所見は,表皮全層に大小不同および異型な核を有する腫瘍細胞がみられ,大部分がボーエン病に類似する所見であったが,一部の腫瘍細胞は真皮中層に浸潤する態度を示したため,ボーエン病から進展したボーエン癌と診断した.human papillomavirus(HPV)に対するpolyclonal抗体を用いた免疫染色では,尖圭コンジロームにおいてはHPV抗原が陽性であったが,亀頭頸から亀頭部のボーエン病および陰嚢部のボーエン癌では陰性であった.HPVのワイドスペクトラムのプローブを用いたin situ hybridization法では各々の病変部核内にHPV陽性所見が得られた.またPCRおよびsequencingにより尖圭コンジロームでHPV6b,ボーエン病・ボーエン癌ではHPV33が検出された.以上のことより自験例は外陰部に発生した,HPVが関与する尖圭コンジローム,ボーエン病,ボーエン癌の合併した稀な症例と考えられた.

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© 1999 日本皮膚科学会
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