日本皮膚科学会雑誌
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当科における緑膿菌の分離状況とアトピー性皮膚炎に緑膿菌の二次感染を併発した2症例
西嶋 攝子今村 美香中矢 秀雄
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2000 年 110 巻 13 号 p. 2135-

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抄録

1994年1月から1999年12月までの6年間に皮膚感染病巣から分離した緑膿菌57株について,年度別分離数,病巣の種類,同時に分離された菌種,薬剤感受性を検討し,加えてアトピー性皮膚炎(AD)にカポジ水痘様発疹症と緑膿菌の二次感染を併発した2症例を報告した.緑膿菌の分離数は最も多い年で16株,少ない年で2株(平均9.5株)であり,ブドウ球菌と比較してかなり少数であった.多くが潰瘍,ビランから分離され,特に足底,足趾からの分離率が38.6%と高かった.単独で分離されたのは22.3%であり,黄色ブドウ球菌(黄色ブ菌)と共に分離されたのが,43.9%と最も多かった.薬剤感受性成績は,多くの薬剤で感受性は良好に保たれていたが,CET,FMOX,MINO,FOM,STに感受性はほとんどなく,OFLX,GMの感受性も良くなかった.緑膿菌の二次感染を併発したADの2症例は,いずれも重症のカポジ水痘様発疹症,黄色ブ菌感染も合併しており,局所は浸出傾向が強く,高熱を伴い全身状態も悪かった.1例では局所に副腎皮膚ホルモン剤の外用を行い,皮疹が乾くとともに症状は改善したが,他の1例では,体幹全域に緑膿菌感染が拡大し,抗菌薬の全身投与が必要であった.緑膿菌感染症は皮膚科領域では分離数も少なく稀な感染症であるが,浸出傾向が特に強く,黄緑色の膿苔と独特の臭気をみた時には,本菌の感染を疑い,病態に応じた適切な対応を行うことで症状の改善が計られると考え,異なる治療方針で対応した2症例を報告した.

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