日本皮膚科学会雑誌
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悪性黒色腫の術後補助化学療法による治療関連白血病―1例の報告と補助化学療法を受けた73例の追跡調査―
高田 実八田 尚人竹原 和彦
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2000 年 110 巻 3 号 p. 297-

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抄録

本邦では黒色腫の手術後にDAV療法またはDAVフェロン療法が補助的治療法として広く行われているが,最近,これらの補助的治療法を受けた黒色腫患者に骨髄異形成症候群(MDS)の発生が認められたことが複数の施設から報告され,黒色腫の長期生存例における2次発癌が懸念されている.われわれも,左3趾腹原発の黒色腫に対して術前後にDAVフェロン療法を5クール施行され,その2年半後に急性白血病で死亡した71歳男性例を経験した.骨髄の腫瘍細胞の染色体検査では5番および7番染色体を含む多彩な核型の異常が認められ,治療関連白血病と診断された.これを契機に1984年から1997年の14年間に,金沢大学皮膚科において術後に補助化学療法を受けた悪性黒色腫患者73例の予後を調査したが,上記の例以外には白血病またはMDSの発生は認められなかった.しかし,手術後2年以上に亘り末梢血液像が定期的に測定されていた長期生存例35例中3例(8.5%)に軽度ながら遷延性の血球減少が認められた.黒色腫の術後補助化学療法施行例には自験例のような2次発癌があり得ることを考慮し,治療終了後も慎重に経過を追跡する必要があろう.

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© 2000 日本皮膚科学会
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