日本皮膚科学会雑誌
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皮膚悪性腫瘍を多発し抗CENP-F抗体陽性を示したF群色素性乾皮症の1例
加藤 吉弘室 慶直安江 敬松本 義也大橋 勝八木 孝司
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2000 年 110 巻 3 号 p. 301-

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抄録

62歳女性,両親が近親婚.幼小児期より日光露出部に小色素斑が多発し,皮膚は乾燥萎縮していた.38歳時,顔面腫瘍にて初診.F群色素乾皮症と診断され,その後数回腫瘍切除術を行う.62歳時,顔面の有棘細胞癌切除目的で入院の際,血液検査にて抗核抗体陽性であったため,対応抗原の同定の目的で,HEp-2細胞を用いた間接蛍光抗体法を行ったところ,抗PCNA抗体と類似する散在型斑紋染色パターンを示し,分裂期細胞ではいわゆるdiscrete speckledのパターン,分裂終期ではmidbodyが染色された.またHeLa細胞抽出蛋白を用いたイムノプロット法にて約350kDaの蛋白が認識され,以上の結果から,この患者の自己抗体は抗CENP-F(Centromere protein-F)抗体であると考えた.抗CENP-F抗体は細胞周期特異的なセントロメア抗原を認識する自己抗体で,リウマチ性疾患より悪性腫瘍患者に圧倒的に多く見られることが近年報告されている.今回,皮膚悪性腫瘍患者にも同抗体が見出されることが判明し,今後新たな臨床的意義をもつ可能性がある自己抗体と考えられた.

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© 2000 日本皮膚科学会
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