2001 年 111 巻 2 号 p. 165-170
抗Th/To抗体陽性の汎発性強皮症の男性例を報告する.症例は64歳の男性.両手指の発赤,腫脹および手指の関節の腫脹にて発症した.当科受診時には強指症と躯幹に及ぶ皮膚硬化,Raynaud現象,指尖部虫喰様瘢痕,舌小帯短縮,瀰漫性色素沈着,右手掌の石灰沈着および手指と膝の関節痛を認めた.全身精査にて肺病変,腎病変などの内臓病変は認めず,甲状腺機能は正常であったが,シェーグレン症候群の合併を認めた.抗Th/To抗体は汎発性強皮症に特異的であると考えられているが,本邦では同抗体の疾患特異性や汎発性強皮症患者の臨床症状との関連は検討されていない.欧米の報告では,抗Th/To抗体陽性の汎発性強皮症患者の臨床的特徴として,limited typeが多く,手指の浮腫性腫脹,小腸病変,甲状腺機能の低下が高頻度で,関節炎および関節痛は稀とされている.自験例は過去の報告とは異なる臨床症状を呈しており,本邦での抗Th/To抗体陽性汎発性強皮症患者の臨床像について,更なる検討の必要性が示唆された.