2003 年 113 巻 10 号 p. 1523-1533
血管肉腫の症例や集計解析報告は数多くあるが,系統的治療法の指針が示されてこなかった.近年実施されている根拠のない集学的治療法に警鐘を鳴らす意味で,本稿に北里大学病院皮膚科で現在実施されている治療戦略を提示した.治療にかかわる重要事項としてまず熟知すべき血管肉腫特有の性状を挙げた.他種の悪性腫瘍とはかなり異なる特性があることを認識すべきである.次に治療法として外科療法,放射線療法,抗腫瘍剤療法,免疫療法があるが,実施するにあたり把握しておかなければならない問題点を提起した.治療自体が病勢を悪化させる危険性があることを強調した.さらに症例の病期にあった選択すべき治療法を系統的に列記した.最後に十分なインフォームドコンセントをとり,告知することで患者および家族との協力体制を整えることの重要性を述べた.