抄録
皮膚潰瘍に対する直線偏光近赤外線照射療法の有用性について,動物実験ならびに臨床研究を施行した.動物実験では,照射開始後5日~10日目には潰瘍面は縮小し,組織学的に血管新生や細胞増殖が認められた.本法は皮膚血流量を増加し,血管新生と細胞増殖を促進することから皮膚潰瘍の治療に有効であると考えた.臨床研究において,皮膚潰瘍の原因疾患により本治療法の有効性に差が生じた.糖尿病性潰瘍,褥瘡,熱傷潰瘍では効果が認められたのに対し,うっ滞性皮膚炎,静脈瘤性症候群による皮膚潰瘍では充分な治療効果は認められなかった.その理由として,今回の我々の方法では,微細な血管の血流改善や血管新生に対しては有効であったが,深部血管に対しては血行障害を改善する作用が不充分であったためと推測した.しかしながら本法は原因疾患によっては皮膚潰瘍の新しい治療法として有用であると考えた.