日本皮膚科学会雑誌
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原著
趾爪白癬に対するイトラコナゾール400mg パルス療法の臨床効果の検討―60 歳未満群と 65 歳以上群の比較―
常深 祐一郎嶋津 苗胤服部 尚子白井 明外山 啓子佐伯 秀久小宮根 真弓玉置 邦彦
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2006 年 116 巻 2 号 p. 193-200

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抄録
爪白癬は 60 歳代以降に高い罹患率を示す.今回,趾爪白癬患者を60 歳未満の群と 65 歳以上の群に分け,イトラコナゾール400mg パルス療法の臨床効果と安全性について比較検討した.併用禁忌薬及びカルシウム拮抗薬内服中の患者および肝酵素が基準値の上限の2.5 倍を超える患者を内服不適応とし,各クール前と 3クール終了1 カ月後に血液検査を行った.60 歳未満群は 37 人,平均 39.0±9.3(18~59)歳,65 歳以上群は32 人,平均 70.9±4.4(65~83)歳であった.安全性については全症例を解析対象としたが,混濁比については第 1 趾爪に病変を認めた症例(各群25 人,20 人)において検討することとした.有害事象は 60 歳未満群で2 例(5.4%)(総ビリルビン上昇,薬疹,各1例),65 歳以上群で 2 例(6.3%)(ALP 上昇,LDH 上昇,各1例)で,頻度に有意差はなく,いずれも軽度でイトラコナゾール中止にて無治療で軽快した.混濁比については,開始前は 60歳未満群8.14±2.38,65歳以上群8.27±2.29 で有意差はなかった.パルス療法開始後4,8,12,24,36 週での混濁比の減少は 60 歳未満群0.40±0.82 ,2.64±2.06 ,3.68±2.93 ,4.40±2.92 ,4.80±3.35,65 歳以上群0.30±0.57,1.45±1.28,2.83±1.76,4.83±2.61,5.03±2.77 で,有意差はなかった.以上よりイトラコナゾールパルス療法は,高齢者においても爪白癬の有用な治療法であり,安全に行えると考えられる.
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© 2006 日本皮膚科学会
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