抄録
67歳,男性,大工.初診の12年前より,顔面,頸部,両手背に苔癬化病変が出現した.臨床像より慢性光線過敏性皮膚炎と診断し,遮光および抗ヒスタミン剤の内服・副腎皮質ホルモン剤の外用にて加療していた.症状悪化時には入院させ遮光し,副腎皮質ホルモン軟膏と亜鉛華軟膏を重層すると数日で著明に改善するが,退院すると翌日から再燃した.光線テストで最小紅斑量の低下はなく,自宅での何らかの抗原曝露により発症している可能性を考えた.パッチテストを施行した結果,標準抗原の松脂および患者の作業場にあったエゾマツのおがくずに陽性を示した.直接おがくずに接触しなくても作業場にいるだけで症状が出現していることから,松脂によるairborne contact dermatitisと診断した.抗アレルギー剤の内服と副腎皮質ホルモン剤の外用を行い,作業時に肌を露出しないよう指導したところ,半年で苔癬化病変は消失した.