2009 年 119 巻 5 号 p. 893-898
初診時の臨床像が菌状息肉症(MF)の典型例と異なっていたが,7年の慎重な経過観察の後に確定診断に至った症例を報告する.71歳の女性.患者は,68歳頃より体幹・四肢に痒みを伴う紅斑を自覚していた.腋窩,乳房,腹部に米粒大の対称性浸潤性紅斑と紅色丘疹が多発し,上肢でも浸潤性紅斑が多発融合していた.皮膚生検を行ったところ,表皮内にリンパ球が個別に浸潤していたが明らかなリンパ球の異型は確認できなかった.そこで,痒疹または丘疹紅皮症と診断し,PUVA療法を行った.また,強い痒みに対しプレドニゾロン内服を併用した.しかしながら,77歳時,3回目の皮膚生検ではポートリエの微小膿瘍を認め,皮膚組織と末梢血のT細胞の抗原受容体遺伝子のクロナリティーが観察され,典型的なMFの所見が確認された.自験例で確定診断までの7年間の経過をearly MFと解釈するかについて考察する.