日本皮膚科学会雑誌
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119 巻, 5 号
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日本皮膚科学会ガイドライン
皮膚科セミナリウム 第48回 炎症性角化症
  • 小宮根 真弓
    原稿種別: 皮膚科セミナリウム 第48回 炎症性角化症
    2009 年 119 巻 5 号 p. 863-871
    発行日: 2009/04/20
    公開日: 2014/11/28
    ジャーナル 認証あり
    著明な角化と表皮の増殖性変化から,当初は表皮に乾癬の病態の中心的な異常があると考えられていたが,シクロスポリンの有効性,またSCIDマウスの系において,患者のCD4陽性T細胞が必要なことから,T細胞の役割,なかでも,Th1細胞が病態の中心的役割を担っていると考えられるようになった.最近ではIL-17を産生するTh17細胞が同定され,現在ではこれが乾癬の病態の中心と考えられている.T細胞のTh17細胞への分化は,IL-23を産生する樹状細胞によって制御されているため,樹状細胞の役割も注目されている.抗TNFα抗体や,抗IL-12/23p40抗体が臨床応用されて乾癬に対する有効性が証明されており,これらの理論に臨床的裏づけを与えている.しかしながら乾癬の病変がなぜ皮膚という特異的な臓器に生じるのかについては,いまだ説明がつかない.今後の研究の発展により解明されることを望む.
  • 中西 元, 岩月 啓氏
    原稿種別: 皮膚科セミナリウム 第48回 炎症性角化症
    2009 年 119 巻 5 号 p. 873-879
    発行日: 2009/04/20
    公開日: 2014/11/28
    ジャーナル 認証あり
    膿疱性乾癬は,病理組織学的にKogoj海綿状膿疱を特徴とする角層下膿疱を形成する原因不明の疾患である.発熱,全身倦怠感を伴って全身の潮紅皮膚の上に無菌性膿疱が多発する汎発性と掌蹠など一部に皮疹が出現する限局性に分類できる.汎発型膿疱性乾癬はいわゆる特定疾患であり,本年度,診療ガイドラインがまとめられた.ここでは,診療ガイドラインにそって,汎発性(全身性)膿疱性乾癬を中心として解説したい.
  • 鳥居 秀嗣
    原稿種別: 皮膚科セミナリウム 第48回 炎症性角化症
    2009 年 119 巻 5 号 p. 881-886
    発行日: 2009/04/20
    公開日: 2014/11/28
    ジャーナル 認証あり
    毛孔性紅色粃糠疹は,毛孔性角化性丘疹が拡大して紅斑局面を呈するが,手掌や足底にもびまん性角化性紅斑をみる.従来の治療法に加えて,近年は生物学的製剤の有効例の報告もみられる.淡紅斑が躯幹,四肢に多発するジベルばら色粃糠疹は,自然消褪傾向があるが,本症がQOLの低下をもたらす点に注意が必要である.暗紫色の角化性紅斑が多発する扁平苔癬は,ウイルスとの関連やケモカイン発現などを中心に病態の解明が進められているが,最近は本症においても生物学的製剤の有用性の報告がなされている.
原著
  • 濱 直人, 濱崎 洋一郎, 籏持 淳, 山崎 雙次
    原稿種別: 原著
    2009 年 119 巻 5 号 p. 887-891
    発行日: 2009/04/20
    公開日: 2014/11/28
    ジャーナル 認証あり
    29歳,男性.後頸三角部の皮下結節を主訴に当科を受診した.超音波検査にて結節は皮下の浅層に位置するリンパ節であると考え,局所麻酔下に生検を施行した.手術後,左上肢の疼痛および左上肢の外転挙上困難が生じたため整形外科を受診,医原性副神経損傷と診断された.生検後78日目に神経縫合術を施行し,術後7カ月で機能の回復をみた.医原性副神経損傷やそれに伴う医事紛争を回避するためには,後頸三角部の手術の際に医療事故が発生していること,この部位の診断治療は主に耳鼻科領域であることを認識し,皮膚科で安易に検査や手術の予定をたてない事が重要である.手術の際は合併症について十分に説明し,同意を得たうえで行うべきである.
  • 植田 郁子, 白崎 文朗, 齋藤 敦, 稲沖 真, 竹原 和彦
    原稿種別: 原著
    2009 年 119 巻 5 号 p. 893-898
    発行日: 2009/04/20
    公開日: 2014/11/28
    ジャーナル 認証あり
    初診時の臨床像が菌状息肉症(MF)の典型例と異なっていたが,7年の慎重な経過観察の後に確定診断に至った症例を報告する.71歳の女性.患者は,68歳頃より体幹・四肢に痒みを伴う紅斑を自覚していた.腋窩,乳房,腹部に米粒大の対称性浸潤性紅斑と紅色丘疹が多発し,上肢でも浸潤性紅斑が多発融合していた.皮膚生検を行ったところ,表皮内にリンパ球が個別に浸潤していたが明らかなリンパ球の異型は確認できなかった.そこで,痒疹または丘疹紅皮症と診断し,PUVA療法を行った.また,強い痒みに対しプレドニゾロン内服を併用した.しかしながら,77歳時,3回目の皮膚生検ではポートリエの微小膿瘍を認め,皮膚組織と末梢血のT細胞の抗原受容体遺伝子のクロナリティーが観察され,典型的なMFの所見が確認された.自験例で確定診断までの7年間の経過をearly MFと解釈するかについて考察する.
  • 新山 奈々子, 天羽 康之, 阿部 美知子, 斎藤 晴夫, 笹原 武志, 勝岡 憲生
    原稿種別: 原著
    2009 年 119 巻 5 号 p. 899-906
    発行日: 2009/04/20
    公開日: 2014/11/28
    ジャーナル 認証あり
    今回我々はメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant Staphylococcus aureus,以下MRSAと略す)の院内拡散を防止する対策に殺菌特性をもつ金属銅が活用できるかについて検討した.まず,in vitro殺菌試験において患者由来MRSA株はS. aureusおよびMRSAの各標準菌株と同程度に接触反応時間に比例して漸次殺菌され,180分で完全に殺菌された.また,銅表面上にフィルターをのせ菌体が直接接触できないようにした場合には180分後でもわずかしか殺菌されなかった.これらのことから,金属銅はMRSAを含むS. aureusに対して強い殺菌性を示し,その殺菌効果発現には菌体が金属表面に直接接触することが重要であることが明らかとなった.次いで,MRSA保菌患者ベッド周辺の床に銅板を設置したところ,同部床のMRSAを含むS. aureusおよびその他のブドウ球菌(other Staphylococcus)の菌数が有意に減少した.MRSA汚染のリスクが大きい病室ベッド周辺や処置室の床周囲への銅板設置は病棟内MRSA汚染の拡散防止策のひとつとして有用であると考えられる.
  • 内 小保理, 内 博史, 小河 祥子, 師井 洋一, 古江 増隆, 樗木 晶子
    原稿種別: 原著
    2009 年 119 巻 5 号 p. 907-913
    発行日: 2009/04/20
    公開日: 2014/11/28
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    九州大学皮膚科初診患者1,202名から回収したDLQIの結果を検討するとともに先に報告したSkindex16の結果1)との比較を行った.DLQIの総合スコア平均値を疾患群ごとに比較すると,湿疹皮膚炎群,蕁麻疹群,薬疹・中毒疹,角化症群,付属器疾患群,膠原病群,感染症群,色素異常症群,紅斑・脈管疾患群,母斑症群,腫瘍群の順でスコアが高値であった.DLQIの総合スコアと下位尺度の平均点を男女別で比較すると,症状・感情スコアのみ有意差をもって女性の得点が高かった.総合スコアを年代別に比較するとでは高い年代ほどスコアが低下した.疾患群ごとに年齢による変化をみていくと,湿疹皮膚炎群は年齢によりスコアが低下する傾向があるのに対し,腫瘍群では加齢によりスコアが上昇する傾向がみられた.
学会抄録
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