日本皮膚科学会雑誌
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原著
多発性基底細胞癌は偏側性に発生する
村田 洋三熊野 公子高井 利浩酒井 大輔菊澤 亜夕子
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2012 年 122 巻 10 号 p. 2487-2493

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抄録

遺伝的要因,環境要因などの特別な背景を有しない基底細胞癌における多発性について自験例を検討した.兵庫県立がんセンターで25年間に扱った基底細胞癌751例中,明らかな背景を有しないものは732例で,この内2個以上の多発例は52例(7.1%)であった.当初単発であったが,後に新たな基底細胞癌が生じる異時発生例は15例であり,初診時単発症例の2.2%にあたる.その新生は初診19年後まで見られた.一方,初診時から既に多発していた同時発生例は37例で,その内4例(11%)に更に新たな基底細胞癌が異時性に発生した.顔,躯幹,四肢の領域で更に左右に発生部位を区切って検討すると,多発症例では同一領域に生じる場合に,左右の一方に偏る傾向があり,2個の腫瘍の場合には二項分布検定による解析で有意な蓋然性が認められた(p=0.0006594).また,近接した発生も多く見られた.その背景として,胎生期後期でのmutationの可能性が考えられた.

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© 2012 日本皮膚科学会
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