日本皮膚科学会雑誌
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原著
過去6年間における薬疹患者の統計的観察―横浜市立大学附属病院受診例について―
渡邉 裕子佐野 沙織村田 奈緒子長島 真由美白田 阿美子前田 修子山根 裕美子池澤 善郎相原 道子
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2012 年 122 巻 10 号 p. 2495-2504

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抄録

2003年4月から2009年3月までの過去6年間に横浜市立大学付属病院を受診した薬疹患者について解析した.総数は341名,原因薬は抗菌薬が最も多く29%,次いで抗腫瘍薬18%であった.抗菌薬では耐性菌増加に伴いグリコペプチド系が13%,カルバペネム系が10%と増加し,抗腫瘍薬では分子標的薬が19%と急増していた.発疹型は紅斑丘疹型がもっとも多かったが,Stevens-Johnson症候群/中毒性表皮壊死症が5%,1998年以前の統計では分類されていなかった薬剤性過敏症症候群(DIHS)が2%にみられた.抗腫瘍薬の発疹型は限局する紅斑丘疹や手足症候群,光線過敏型など多彩であり,特に分子標的薬は痤瘡型,水疱型,爪甲異常といった特徴的な発疹型を呈していた.好酸球増加は17%の患者でみられ,紅皮症型がもっとも高頻度であった.原因薬剤の検索では,パッチテスト,皮内テスト,薬剤添加リンパ球刺激試験がそれぞれ施行例の34%,68%,60%に陽性であった.治療は薬剤中止または継続したままで約80%が軽快し,抗腫瘍薬やインターフェロン製剤は薬疹を生じても継続できる症例が多かった.今後も新薬の開発とともに薬疹の原因薬や臨床像は変化していく.各時代の薬疹の調査と知識の集積は今後も薬疹に対処していくために重要である.

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