2014 年 124 巻 7 号 p. 1295-1299
95歳,女性.前額正中にハエ幼虫が寄生した50×45 mmの表面潰瘍化した腫瘤あり.生検組織像より基底細胞癌と診断し,用手的に幼虫を除去後,局所麻酔下に骨膜上で腫瘤を切除し局所皮弁で修復した.蠅症は本邦では衛生状態の改善により稀な疾患になった.しかし,最近の34年間の本邦報告例を集計すると,かつて最も報告の多かった耳蠅症は稀になり,代わりに外傷性蠅症,特に悪性腫瘍に伴う蠅症が増加していた.急速な高齢化により蠅症は病的環境下では現在も生じうる疾患であり,切除不能な体表に露出した悪性腫瘍や慢性創傷を管理する際には注意する必要がある.