日本皮膚科学会雑誌
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皮膚色調並びに各種藥物の紫外線吸收檢査に就て
梶川 宏飯澤 二郎
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1957 年 67 巻 9 号 p. 588-

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抄録

皮膚色に関する研究は古来種々の方面から行われており,本邦に於ける最近の業蹟にも人類学的,解剖学的立場から,或は皮膚科学的に皮膚病,全身疾患との関連に於て,又照射光線と皮膚感受性,特に紅斑,色素沈着との問題等に就ての研究が報告されている.然しながら之等の研究は色の表示法の困難さの為に著しく阻害されて来た.即ち現在やゝ一般に行われている色の表示法にも,森-金子のOswald色彩理論に基く表示法,東及び森の光電池にフィルターを組合せた光電色沢計の読みによる表示法,又Luschan,Frisch,Gates等の臨床的に写生せる色票の番号を以てする表示あり,夫々の立場から独自の測定値を発表しており,之等測定値の相互の関係を求めるのは殆ど不可能の状態にある.一方最近の物理学的測定法の進歩により,分光測定法が比較的容易に行われ,物質構造と光線吸収性の特異的関係を応用して,紫外部から赤外部に至る広範囲に於て吸収測定が行われているが,反射光の分光測定に就ては分光反射曲線から構成物質の分析を試みんとの企てがGoldzieher其他に依つて行われ,紫外部に於てやゝ興味ある知見を得たが,可視部では未だ見るべき成果が無いと報告している.色の測定,表示には前述の如く種々の困難さがあるが,之を客観的な数値として表示するには分光測定法に基き,C.I.E.(Commission Internationale d'Eclaisage)に準拠する国際表色で表示するのが最も適当であると考えられるが,分光測定法には未だ多少の困難さがあり,多数の測定には適さない為,分光測定法によりC.I.E.値を予め測定した色票を以て比色する間接法が簡便法として行われ,此の方法で西浦,広渡は夫々季節的消長,地域的の皮膚色調変化に就き報告した.然しながら色票による測定も,色票の構造,光源等の問題があり,此の困難さの為に,特に病的皮膚の測定には分光測定法に求めねばならぬ状態にしばしば遭遇する.次に光線皮膚炎との関係から遮光物質の研究が行われ,種々の薬物の光線吸収の状態の追求も亦なされており,これら薬物の光線感作作用,並びに遮光作用等の光力学的作用も次第に解明されつゝある現状にある.著者等は海水浴時の光線の影響と関連して健康者の皮膚色調の変化を追求し,各種皮膚色素異常症の皮膚色調を測定し,一方諸種薬物の光線吸収性に就ても測定し得たので其の結果を茲に報告する.

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© 1957 日本皮膚科学会
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