日本皮膚科学会雑誌
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色素細胞母斑の単位構築に就て
木下 瞭
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1960 年 70 巻 8 号 p. 815-

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抄録

母斑組織が真皮深層にはじまり,上昇するに從つて複雑に分岐し,其の構成要素たる母斑細胞も亦層を追つて次第にその形態が推移してゆく状態は,夙にMassonに依つて植物の花の姿にたとえられた.その姿はまた,観点を変えて観れば,皮膚に於ける神経櫛起源性諸要素(メラノブラスト,Schwann氏合胞体,Terminalzellen)の配置と母斑組織の構築との間にも驚くべき共通点がある(川村,插圖95,96).然し乍ら一般の母斑組織に就て見れば,多数の構築單位入り乱れ縺れ合って居て,個々の構築単位の姿が上記の如きものであろうということが抽象的に理解されるに過ぎないものであつて,個々の單位構築の姿を実際に追求したものは無い.母斑構築の最小單位を求めうるとすれば,それは最も小規模な色素細胞母斑,即ち黒子に於いてであろう.我國で黒子と呼ばれるものの多くは,之を色素細胞母斑と看做してよいが(後述),黒子の原語lentigoの概念は,我國と外國とで多少趣を異にして居るので,その語義に就て予め述べる.

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© 1960 日本皮膚科学会
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