日本皮膚科学会雑誌
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白鼠皮膚組織に対する各種油脂,脂肪酸及び性ホルモンの影響について
加藤 吉策
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1962 年 72 巻 3 号 p. 241-

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抄録

1928年,Evans & Burr及び1929年,Burr & Burrは白鼠を脂質を含まない飼料で飼育した場合,成長障碍,排卵異常,そのほか特定の疾患を惹起し,ついに死亡することを認めた.そして,この際ある種の脂肪酸を投与することにより,かゝる疾患の発生を予防し,さらに改善せしめ得ることを知つた.Burr & Burr(1980),Tange(1982a,1982b)らの以後の検討により,リノール酸,リノレン酸,さらにアラヒドン酸がこの脂質欠乏(以下脂欠と略称)症状を改善するものであることがわかり,必須脂肪酸と呼ばれる様になつた.その後,脂質,就中必須脂肪酸,及び脂質代謝に関する研究が各分野で広く行われるようになつたのである.必須脂肪酸欠乏動物を対象とした皮膚科的研究も,Burr & Burr以来,数多くの報告がある.また必須脂肪酸が人の皮膚疾患に対して治効をもつことも知られている.さらに近年,必須脂肪酸は正常組織の形態及び機能の維持に必須のものであるとされるに至つている.しかしながら,経口投与された各種脂質,或いは脂肪酸それ自体が皮膚に与える生理的影響については、充分解明されていない.特に,この際皮脂腺が如何なる反応を示すかと云うことは甚だ興味深いのであるが,これに関する知見も少ないのである.また各種脂質が皮膚の組織形態に,またはその機能に如何なる役割りを果しているかという点についても現在なお不明の点が多いのである.かゝる観点より,脂漏の研究の一環として,先に教室の高橋は,各種油脂,脂肪酸投与が白鼠の皮膚の一般状態に及ぼす影響並びにこの際組織学的に生ずる諸変化について報告した.今回,私はさらに,爾余の脂質乃至は脂肪酸を白鼠に経口投与して,それらが皮膚組織に及ぼす影響について,臨床的,組織学的に詳細に検討するとともに,脂欠食で飼育した白鼠に附加的に各種飽和,不飽和脂肪酸及び男女両性ホルモンを投与したときの影響についても検討した.この際特に皮脂腺の態度について注目し,脂質染色を追行して若干検索を加えた.以上の実験により興味ある所見を得たので報告する.

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© 1962 日本皮膚科学会
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