日本皮膚科学会雑誌
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皮脂排出機能並びにそれの皮表に於ける性状に関する研究
土屋 明
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1962 年 72 巻 4 号 p. 295-

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抄録

皮表脂質は脂腺排泄管から排出されたものと角質層から由来したものとで成立ち,皮表に一種の薄い脂質の膜を形成しているものであるが,この皮表脂膜は皮膚柔軟性の保持,体温放射,乾燥化,細菌侵襲等に対する防禦能としての機能を有し,皮膚生理に重要な役割を演じているものであり,古くからその性状機能等が諸家によつて研究され論じられてきている.近年この皮脂に対して発汗が重大な影響を与えるものとして注目される様になつた.即ち皮表脂膜は脂質と汗のemulsionによつて形成されており,前記の皮膚表面に於ける種々の機能はこのsurface filmがemulsionであるという性状に依つて明解に説明しうると主張されたり,又一方これに対し実験的にこのemulsion説を追求し少なからず疑義を表明している者もあり,未だに皮表脂質と汗の関係に就いては結論的なものが見出されず現状に至つている.私は単位時間内に新たに排出された皮脂をオスミウム酸濾紙により観察し,これによつて皮脂腺の排出程度を推量し,皮脂腺機能の諸問題のうち,その2,3について検討し,更に位相差顕微鏡を用いてsurface filmの性状を観察,検討を加え見るべき知見を得たので諸家の報告と比較検討しつつ独自の見解について報告する.

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© 1962 日本皮膚科学会
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