日本皮膚科学会雑誌
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尋常性白斑の病態生理学的研究
小野 猛雄
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1963 年 73 巻 6 号 p. 402-

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抄録

皮膚が対外保護,知覚,分泌,排泄,呼吸,体温調節,吸収,対内保護等,他の諸器管におとらず重要な機能にあづかるにもかかわらず,その生理学的研究は,特に,人体に於ては種々の制約を受けて,他の分野の昨今の目ざましい発展にくらべて,最もおくれた研究対象であつた.皮膚機能の多様性に起因する混乱と,皮膚自身に,形態学的に,今尚,疑問とされる点が多く,且,それらがその機能を云々する上に決定的な支配力をもつ場合が多い.血管系および神経系における中心部,或は中枢へのつながりとその影響,と云つた関連する因子の多さと不定性,更に加えて,生理学的研究手技の発達の遅滞が二重三重の障碍となつてきた.しかし近時20世紀以後,電気生理学,組織細胞化学等の長足の進歩により,ようやく生理学者或は皮膚科学者による皮膚生理学,或は病態生理学的研究が散見され,次第にこの方面の新知見が加えられつつある.一方尋常性白斑は,1765年Le Catによつて神経説が唱えられて以来,実に2世紀にわたる今日迄,その発症病理に関して,栄養神経障害.血管運動神経障害,内分泌障害,中毒,血行及び淋巴行の支障による栄養障害等々が強調されて来たが,未だ全く推測の域を出ない.著者は,本疾患者を比較的多数例診る機会を得たので,最近反射光電式の装置が考案されるに及んで飛躍的発展をとげたプレチスモグラフ法をけじめ,発汗連続記録装置,触痛覚計,及び,皮膚表面湿度計(不感蒸泄測定装置)を用いての生理学的方法により,尋常性白斑部位についての病態生理学的研索を行い,尋常性白斑の発生機序の解明の資とすると共に,これ等諸機能のメカニズムについてのいささかの見解を加えて此処に報告する.

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© 1963 日本皮膚科学会
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