抄録
表皮細胞はたえず分裂し増殖する増殖細胞群と,他方分化しケラチンを形成する棘並びに顆粒細胞群とに分けられ,この2つの細胞群の均衡により,正常表皮では一定の平衡状態が保たれているのである.そしてこの増殖細胞の検索には従来有糸分裂像を示標とする方法が採られていたが,近年DNAの特異的前駆物質である3H-thymidineの合成と解像力の高いフイルムの出現とにより3H-thymidine autoradiographyが広く用いられるようになつて来た.けだしこの方法によると,増殖細胞の状態を単に静的にのみならず動的にも把握出来るが,この方法を表皮に応用した研究は,動物実験的報告は暫らくおき,人では殆んど見いだされていないと言つても決して過言ではない.余が1963年人の正常及ば乾癬表皮について公にしたのが最初で,以来Fukuyama,Eps-tein,Van Scott(いずれも1965)の報告がみられるに過ぎない.余は本第1篇においては人につき表皮角化を中心に,胎児をも含め正常並びに病的角化,更に紫外線照射,角層剥離時の表皮における3H-thymidine標識細胞の分布並びに動態につき検索しいささか新知見を得たので,以下,その成績を記載しようと思う.