抄録
ある種の良性皮膚腫瘍あるいは母斑においては,その組織中に一見基底細胞上皮腫を思わせる形態の細胞増殖が見られる場合がある.このことは古くから知られていて,Lever(1961)によればそれは次のような疾患に見られるという.即ちDarier氏病,脂漏性角化症,乳嘴状汗管嚢腫,脂腺母斑,皮膚線維腫その他である.またこれらの疾患のうちのあるものでは時に基底細胞上皮腫との移行または併発も見られるという.しかしながら組織学的にのみ見いだされる基底細胞上皮腫様の細胞増殖の本態については,簡単にそれは基底細胞上皮腫であるとする報告もあるが,基底細胞上皮腫そのものの本態が何かという問題もからんでまだ定説はないようである.そこで著者は,以下この病変に関する文献を簡単に回顧すると共に,教室に保存されていた皮膚病理組織標本の中から見いだされた同様の病変を持つた症例について,その増殖組織の性質を多少とも明らかにしたいと考えて,連続切片による立体的観察,及び2,3の組織化学的検討を行なつた.