日本皮膚科学会雑誌
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78 巻, 2 号
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  • 小宮 勉
    1968 年 78 巻 2 号 p. 53-
    発行日: 1968年
    公開日: 2014/08/27
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    ある種の良性皮膚腫瘍あるいは母斑においては,その組織中に一見基底細胞上皮腫を思わせる形態の細胞増殖が見られる場合がある.このことは古くから知られていて,Lever(1961)によればそれは次のような疾患に見られるという.即ちDarier氏病,脂漏性角化症,乳嘴状汗管嚢腫,脂腺母斑,皮膚線維腫その他である.またこれらの疾患のうちのあるものでは時に基底細胞上皮腫との移行または併発も見られるという.しかしながら組織学的にのみ見いだされる基底細胞上皮腫様の細胞増殖の本態については,簡単にそれは基底細胞上皮腫であるとする報告もあるが,基底細胞上皮腫そのものの本態が何かという問題もからんでまだ定説はないようである.そこで著者は,以下この病変に関する文献を簡単に回顧すると共に,教室に保存されていた皮膚病理組織標本の中から見いだされた同様の病変を持つた症例について,その増殖組織の性質を多少とも明らかにしたいと考えて,連続切片による立体的観察,及び2,3の組織化学的検討を行なつた.
  • 大河内 朝之
    1968 年 78 巻 2 号 p. 70-
    発行日: 1968年
    公開日: 2014/08/27
    ジャーナル 認証あり
    著者は,皮膚疾患病像と病巣局所の皮脂排出および発汗の態度との関連に注目し,2,3の皮膚疾患について検討を加えている.第1報では,尋常性乾癬病巣部における皮脂排出と発汗に,関する研究を行ない,ついでODT療法を行なつた場合にそれの皮脂排出と発汗に及ぼす影響を検討した.今回は,円形脱毛症を対象とした成績について述べる.円形脱毛症は皮膚科領域においてはごく一般的な疾患である.各方面からの研究も多く,非常に多数の論文が発表されている.しかしながら,その発生病因に関しては,現在のところ未だ一定の結論が得られず,諸家の見解も多岐にわたつている.円形脱毛症の臨床症状と経過は,極言すれば脱毛が始まり,ある期間を経過して漸次発毛するという単純なものである.しかし,詳細に検討するとかなり多様な性状を呈していることが発見できる.すなわち局所所見のみでも,残留剛毛や毳毛の有無,毛嚢口の所見,あるいは脱毛部皮膚表面の光沢,萎縮,および陥凹などの点について各病巣が同一所見を示すとはいい難く,また経過については,比較的短期間に完治し再発をみないものから,長期にわたつて進行性に経過し,全身の剛毛の脱落を惹起するものまであり,脱毛要因として複雑な機序の介在が推測されるところである.円形脱毛症の病巣部における皮脂排出についてもあるいは発汗に関しても古くから検討されているのであるが,諸家によりその成績が一定せず,未だ十分検討の余地が残されているのもこの辺に原因があると思われる.かかる観点から著者は,円形脱毛症と全頭脱毛症の病巣部における皮脂排出ならびに発汗の機能的態度を研究し,併せて従来行なわれていない両者の関連性を追求するとともに,臨床経過と局所所見,とくに毳毛との関係についても検討を加えたので報告する.
  • 田子 元
    1968 年 78 巻 2 号 p. 79-
    発行日: 1968年
    公開日: 2014/08/27
    ジャーナル 認証あり
    毛嚢と皮脂腺(以下脂腺という)は通常それぞれ単独に存在するものではなく,両者は相互に密接な関連を有し,1つの単位ないし構成物として毛嚢脂腺系といわれている.毛嚢脂腺系は各種皮膚疾患に際し複雑な形態学的変化を起してくる.しかるに従来毛嚢あるいは脂腺個々単独の研究業績は多くみられるが,毛嚢脂腺系全体として相互の関連のもとにおこなつた仕事はきわめて少ない.また現在の組織学的方法では毛嚢脂腺系の病態変化を全体として把握することは容易ではない.そこでわたしどもはこれを立体的に観察しようとこころみ,500μ厚切片法を用い,さらにパラフィンワックスによる再構築模型を作製し,毛嚢脂腺系の病態を明らかにせんものと試みた.これについては佐藤が日本皮膚科学会総会において報告し,立体組織形態学stereohistomorphologyと呼称した.また尋常性痤瘡,脂漏性湿疹などについてはすでに報告したところである.円形脱毛症に関しては古来数多くの研究業績が発表されている.しかるに本症の原因に関してはいまだ定説がなく,本症共通の要因もほとんど一定していない現状である.本症の臨床経過も種々様々で,短期間に治癒するものから,長期間単発性脱毛巣が固定して治癒しないもの,脱毛巣が多発し,さらに全頭にまで波及する症例もみられる.本症の主要なる変化が毛,毛嚢にあることは当然であるが,このように不定の経過を示す本症の毛嚢変化については諸家の見解はまちまちで一定していない.一方本症について毛嚢脂腺系を一単位としてこれを立体的に研究した報告は少ない.本症の立体的組織構造についてはVan Scottがbalsa wood modelを用いて観察している.今回著者は立体組織形態学の一環として本症病巣部における毛嚢脂腺系の病態変化を,主として単発性円形脱毛症を対象として,経過に応じてその立体的組織構造について観察した.実験には主として500μ厚切片法を用い,さらに再構築模型を作製し検討した.
  • 松尾 久美子
    1968 年 78 巻 2 号 p. 97-
    発行日: 1968年
    公開日: 2014/08/27
    ジャーナル 認証あり
    近年,皮膚の抗原性を証明する研究が次々に発表されているが,その実験結果については多数の研究者の間で未だ見解の一致は得られていない.すでに1921年,Whitfieldは自家感作性皮膚炎autosensitization dermatitisの名称で,皮膚科領域における自己免疫の概念を提出し,自己皮膚に対する抗体産生の可能性を臨床的根拠により推論している.この説によれば,従来漠然とアレルギー性疾患として一括されていた皮膚疾患の臨床像が自己免疫の概念によつてその病因が明解に説明されることが多く,今日臨床的にも,概念の上でも,皮膚特異抗原の存在は多くの人々の認めるところとなつた.すなわち,1)アレルギー性接触性皮膚炎において,第1に現われる組織変化は真皮上層ないし乳頭層の血管周囲の単核細胞の浸潤であるが,完成期における同疾患の主変化は表皮にみられる.また浸潤単核細胞が抗体をになつているとするならば,その表皮への趨化性は,自己の表皮成分に対する自己抗体を有することを想像させる.2)臨床的にきわめて難治の自家感作性皮膚炎が存在する事実,すなわち,主として下肢の急性接触皮膚炎ないし限局性湿疹様変化に続発して,これに類似した湿疹様の散布病巣が対側性に発生する場合がある.この場合,原発巣におけるmodifyされた自己表皮成分を抗原とする抗体産生に起因すると考えれば説明しやすい.また,原発巣がアレルギー性接触皮膚炎である場合にも,続発性散布病巣はそのアレルゲンが接触しなくても発生すること,さらに原発巣が機械的刺激や,不適当な局所治療によつて増悪すると,それに伴なつて散布病巣も増悪することは,抗皮膚抗体の存在をよく示していると考えられる.3)薬剤アレルギーの場合,同一薬剤による反応の場が,表皮あるいは真皮,気管支粘膜,血管,血液成分などであり得ること,あるいは日光皮膚炎の形をとつたものが,原因薬剤の投与中止後も日光照射によつて増悪することについての説明にはMiescherのpartial autoimmunity,さらに進んでcomplete autoimmune reactionの概念の導入によると説明しやすい.以上のような理由からして,皮膚科では自己抗体の存在の可能性が推論されてきたのである.一方,動物実験において抗皮膚抗体を作る研究も数多く重ねられ,古くは1935年,伊藤がモルモットに対する家兎皮膚の抗原性を認めたのに始まり,今日まで皮膚を抗原とする免疫実験は成功するもの,あるいは失敗するものがあり,必ずしも一致した結果が得られていない.1962年,WilhelmjらがFreund's complete adjuvantを用いて家兎の同種皮膚免疫,モルモットの自己皮膚免疫により循環抗体を証明したことが注目され,相ついでMoschos(1964),Nicolau(1964),Rudzki(1966)らが追試実験を行なつているが,同種及び自己皮膚免疫ではいずれも実験は不成功であつた.われわれは表皮の抗原性を動物実験で証明するために,Wilhelmjらの実験を追試し,引続き市販ケラチン(米国NBC社製)を抗原とする免疫実験を行ない,比較検討した.また,ヒト,モルモット表皮の不溶成分を8モル尿素処理によりsolubilizeしたものによる家兎の免疫実験を行ない,次に述べる如く興味ある結果を得たので報告する.
  • 若杉 正弘
    1968 年 78 巻 2 号 p. 114-
    発行日: 1968年
    公開日: 2014/08/27
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    表皮の角化過程を究明するには,ケラチン形成に至るまでを,一方では生化学的に分析する方法と他方では形態学的に検索する方法とがある.けだし光学顕微鏡による形態学的検索は既に限界に達しているところに,新たに電子顕微鏡が登場し,従来知られていなかつた知見が相ついで公にされて来た.Tonofibrilを初めkeratohyalin顆粒,desmosome,いわゆるOdlamd小体,ribosomeなどの角化過程への関与が種々論議されている.しかしこれらに関する知見も今日まだ決して尽くされたわけではなく,特に尋常性乾癬などを除いた種々の病的角化については殆んど知られていないと云つても過言ではない.そこで余は正常の成人並びに胎児の表皮を先ずとりあげ,次で各種の角層肥厚例,更に錯覚化例の表皮に及びそれらの角化過程を電子顕微鏡的に検討したのであるが,これによりいささか新知見を加え得たと思うので以下その成績を記述することにする.
  • 新田 踔男
    1968 年 78 巻 2 号 p. 141-
    発行日: 1968年
    公開日: 2014/08/27
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    顔面播種状粟粒性狼瘡は皮膚結核に属し,結核疹の一つの型として分類されている疾患である.1878年Tilbury,Foxによつて命名されて以来数多くの報告があり,本邦においては1915年(大正4年)土肥(章)がその第1例を記載している.本症に興味のあることは,結核疹でありながら結核化学療法が比較的効果がないとされているところにある.多くの結核患者の菌を陰性化させてきた抗結核薬(一次抗結核薬,二次抗結核薬をふくめて)に抗療する本症が,はたして結核か否かということについて,しばしば論議されてきた理由の一つはここにあるといえよう.私どもの教室では皮膚結核患者にたいして20数年来結核ワクチン療法をおこなつてきているが,真性皮膚結核,結核疹のいずれにも有効,そのうちとくに顔面播種状粟粒性狼瘡には著効をしめしている.さきに教室の松浦が本症に関して詳細な報告をおこなつているが,私どもは昭和36年4月より昭和40年12月までの4年9カ月のあいだに本症82例を観察し,いろいろな角度から検討することができたので,それらについて述べてみたいとおもう.
  • 西岡 五郎
    1968 年 78 巻 2 号 p. 166-
    発行日: 1968年
    公開日: 2014/08/27
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    Jacksonの方法に準じ,人皮より比較的純粋な中世塩可溶性及び醋酸可溶性コラーゲンを抽出,incomplete Fre und's adjuvant処理して家兎に感作した.かかる免疫血清につきmicrotiterにより補体結合反応を行ない,両コラーゲン分画感作血清ともに7週目より抗体価の上昇を認め,7~17週目に8~32倍の抗体価を認めた.
  • 1968 年 78 巻 2 号 p. 167-
    発行日: 1968年
    公開日: 2014/08/27
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