日本皮膚科学会雑誌
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皮膚疾患におけるセロトニンの研究
菊池 滋
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1969 年 79 巻 3 号 p. 180-

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抄録

セロトニンは1948年Rapport,Green,Pageによつて牛血清より血管収縮物質として分離され,Hamlin et al.及びSpector et al.がその合成に成功し,化学構造は5-hydroxytriptamineであることが確認された.これより以前,Vialli & Erspamerはenterochromaffin cellに生理的活性アミンの存在することを認めてenteramineと呼んだが,後にこの物質を分離し5-hydroxytriptamineと同定した.一方,カルチノイド症候群においてLembeckは転移性腫瘍組織に,Pernow & Waldenstromは血液中に大量のセロトニンが存在することを,また,Page et al.はセロトニンの代謝産物たる5-hyroxyindoleacetic acid(5-HIAA)が尿中に大量に排泄されることを認めた.かくしてセロトニンはカルチノイド症候群における特異な症状に関連する化学活性因子として注目を浴びるようになつた.その後,本物質の分布,作用,代謝過程が明らかにされ,特に血管透過性亢進作用を有すること,抗原抗体反応によつて血小板から遊離されること,その噴霧吸入によつてモルモットに喘息様発作を起こし,アナフィラキシー様症状を呈すること,さらにアナフィラキシー惹起時にセロトニンの変動が認められることなどから炎症,アレルギー,アナフィラキシーの発生ないしその進展過程における重要な活性アミンと目されるに至つた.また,皮膚科的にはアレルギー,炎症との関連のほかにカルチノイド症候群にみられる潮紅,ペラグラ様皮疹,毛細管拡張,鞏皮症様変化などが注目されている.血中セロトニン或いは尿中5-HIAAの測定成績については既に諸家によつて報告されており,青木らは皮膚疾患におけるセロトニン代謝について詳細な検討を行なつているが,著者も各種皮膚疾患における血中セロトニン量を,また,実験的接触皮膚炎における血中並びに2,3臓器のそれを測定し,皮膚疾患における血漿ヒスタミン量の測定,皮膚マスト細胞数の変化をも併せて観察,検討した.

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© 1969 日本皮膚科学会
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