日本皮膚科学会雑誌
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“酵素および補酵素に関する諸問題” 多糖体合成の組織化学,特にその細胞内合成の場と生物学的意義
武内 忠男
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1969 年 79 巻 8 号 p. 610-

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抄録

多糖体には単純多糖体と複合多糖体とがあるが,ここで述べられるのはその前者である.ヒトや動物体内での単純多糖体は生理的にはglycogenとして認められているが,生体から取出された組織細胞で人工的にその酵素作用で合成されたものは,生理的なglycogenと必ずしも同じものでない事実があるので,ここではそれらをglycogenと呼ばずに単に多糖体と呼ぶことにした.武内らは,組織化学的に酵素反応を検討中に,glucose-1-phosphateから細胞内でphosphorylase作用で合成された多糖類は生理的glycogenと同じものではないことを認め,またこれにbrancher(amylo-1,4→1,6-transglucosidase)作用があつても生理的glycogenが作られず,amylopectin様の多糖体ができる事実を知り,他方,生理的glycogenの細胞内合成にはglycogenase(仮称)あるいは第3因子の必要なことを憶測して,後にそれがLeloirのいうuridine diphosphate glucose-glycogen-transferaseであることを認めた.したがつて,組織化学的な組織細胞多糖体合成が,どのような意味を持ち,どのような機構から惹起されているかを知る必要があつて,ここ10年間検討を加えてきた.ここではそれらの中から要約した新しい知識と,ここ2,3年間実施してきた反応機構の細胞内局在について主として記載したい.したがつて未発表の内容も含まれる.

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© 1969 日本皮膚科学会
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