日本皮膚科学会雑誌
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基底細胞癌および有棘細胞癌のin vitroの増殖形態
相模 成一郎
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1973 年 83 巻 5 号 p. 205-

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抄録

In vitroでの基底細胞癌の増殖形態として,1)細胞相互の接着は密であり,2)重層をなし,3)細胞集団を形成して組織構築を行ないうる能力をもっているが,4)各細胞の極性は一定方向を示さず,5)線維芽細胞集団とは一線を画して混じ合わない.これに反し,有棘細胞癌の母組織から游出してくる細胞は,1)個々の細胞が孤立性に,自律性に増殖し,2)細胞集団を形成する傾向が少く,すなわち,組織構築能を欠除しており,3)線維芽細胞集団内へも侵入し細胞分裂を行ないうる.以上のように,in vitroでの両種の癌細胞の増殖形態には大きな相異を見出すが,これらの所見はそれぞれin vivoにおける両種の癌組織像と一致するものであり,また,これらの相異は両種の癌細胞のもつself-control mechanismによるものであると推論した.このself-control mechanismとしてのキャロン,レチン,cAMPを簡単に紹介し,本実験で得た成績を文献から考察し,今後の研究のアプローチについて論じた.

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© 1973 日本皮膚科学会
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