日本皮膚科学会雑誌
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情動と皮膚毛細血管との関連性について―精神分裂病患者における検索―
西山 芳夫
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1973 年 83 巻 5 号 p. 223-

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抄録

情動の動きを他覚的に表現する一方法として皮膚毛細血管の動きが注目されている.しかし正常人にあっては種々の要因により影響されるので対照とはなしがたい.そこで精神分裂病者の精神荒廃状態にある“荒廃例”を基本とし,精神症状の落着いている“安定例”,精神症状の不安定な“動揺例”の各類型を対比しつつ,皮膚顕微鏡により左第4指爪廓部毛細血管を観察し,つぎの成績をえた.1)毛細血管計測値は,その病期を問わず正常人のそれの範囲内にあった.2)荒廃例は動揺例より推計学的にみて血管係蹄巾が広かった.3)毛細血管係蹄の形態はMullerの分類に従えば,情動の動きの多い類型ほど定型の占める比率が高かった.4)毛細血管係蹄の経時的変化は,荒廃例と動揺例ではともに51%に見られ,安定例では40%に見られた.5)毛細血管係蹄の動きは各個体によって規制されるもののごとく,各類型によってその動きを分つことはできなかった.以上より,情動の動きを毛細血管係蹄の動きから具体的に表現しうる可能性を求めた本研究の意図は達しえなかった.

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© 1973 日本皮膚科学会
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