日本皮膚科学会雑誌
Online ISSN : 1346-8146
Print ISSN : 0021-499X
ISSN-L : 0021-499X
汎発性鞏皮症の薬物療法及びその薬効機序に関する考察
石川 英一田村 多絵子堀内 龍也服部 瑛石井 容子渡辺 裕子
著者情報
ジャーナル 認証あり

1977 年 87 巻 9 号 p. 555-

詳細
抄録

汎発性鞏皮症は膠原病の中でも難治性の疾患で,各種の治療が試みられているが,いまだ確実な治療法がない.著者らは昭和47年10月以降,本症患者に,合成黄体ホルモン,蛋白分解酵素,SH 化合物 (2-mercaptopropionylglycine) の3種の薬剤の投与を試み,まず最初に結合織に与える影響を検討した.続いて今回の集計時点 (昭和51年1月31日)まで,それらの何れかを最初に3ヵ月以上単独投与した症例54例について治療効果を検討した,その結果,殆んどの例において皮膚病変の進行か停止し,とくに顔面,背部では治療前浮腫ないし浮腫硬化性変化を呈したものの約 1/3 が治療後臨床的無疹となった.しかしながら,前腕皮膚の同様変化については,臨床的無疹まで改善したものは3例に過ぎず,またすべての部位において定型的な硬化病変が完全に軽快したものはなおない.指趾の屈曲性拘縮も発生後は殆んど改善を見なかった.また関節痛,しびれ感もある程度反応したが,レイノール現象は治療に抗した.検査所見では,赤沈充進,白血球減少の改善を認めた例が多い.内臓所見では,レ線像で肺線維症の明らかな改善例はなかった.しかし,肺機能検査,食道病変は軽症例の一部に改善がみられた.一般に皮膚,内臓を含め病変の広範囲に及ぶ症例は治療に抗し,改善は殆んど認められなかったが,皮膚硬化が手指に限局したもの,ないし肢端に限局した例(いわゆる肢端硬化症)は比較的治療によく反応した.薬剤別では特に蛋白分解酵素剤が有効のように思われる.なお,以上今回の治療効果が自然治癒でないことは,治験症例が以前当科で受けた治療では殆んど無効であったことからも裏付けされる.

著者関連情報
© 1977 日本皮膚科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top