日本皮膚科学会雑誌
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マウスメラノーマ細胞内アミノペプチダーゼについて
櫻根 孝俊
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1978 年 88 巻 2 号 p. 83-

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抄録

melanin は melanocyte 内で tyrosine を基質として生成される.ここで基質 tyrosine は細胞質内に free の形で存在すると一般に考えられているが,尚この他にmelanocyte 内で peptide が分解されて生ずる tyrosine も亦基質として利用される可能性も考えられる. mouse melanoma を材料として行った実験結果から,melanoma 組織内に peptidase が存在し, tyrosine を N 末端,C 末端に持つ dipeptide, 真中に持つ tripeptide を分解し tyrosine を遊離する事が確められた.この peptidase 活性は細胞質内溶性分画に局在し,一部は小頭粒分画にも認められる.小穎粒分画の活性は,滑面膜分面とfree ribosome richな分画とにあり,本酵素の生成の場はribosome一小胞体系で,反応の場は細胞質と推測される.この peptidase 活性の強さを4種の黒化度の異る mouse melanoma について比較したところ melanin の黒化度の順とよく一致した. 本酵素は生体内に広く存するleucine aminopeptidaseと基質特異性の面でよく似ているが,若干の相違点があり,特に2価陽イオンの作用態度が異っている.従って melanocyte 特有の aminopeptidase である可能性が充分考えられる. 以上の実験結果から melam・cyte level での melanin 生成に基質を供給する系の存在が強く推測される.

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© 1978 日本皮膚科学会
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