抄録
ICR マウスにおける DMBA 皮膚腫瘍の系と C3Hマウスにおける移植腫瘍の系について,3H-TdR フラッシュ,標識法による標識率,ならびに電顕オートラジオグラフィーによって標識細胞の特徴的所見を検索すると共に,腫瘍細胞をパラローズアニリソーフォイルゲン染色後,落射型顕微鏡によって核 DNA を定量した. DMBA 皮膚腫瘍は,乳頭腫様小腫瘍から大型の悪性腫瘍に至る種々な悪性度を示す腫瘍が得られ,標識率は前者では5~13% の間にあり,後者では7~32% の間にあって高く,移植腫瘍では17~45%の間にあって高いものが多かった標識細胞の電顕的特徴は,いずれも核は電子密度が高く,核内にクロマチンが散在してみられ,細胞質内にはリボソームが多く,ポリソームをなしていた.さらにミトコンドリアや小胞体が多く,トノフィプリルの形成は悪いものが多かった. DNA 量とその分布は DMBA 腫瘍では悪性化するに従って,大型の2nの山と小型の4nの山が変形し,平坦な山型となり,多倍体の出現が多く認められ,移植腫瘍ではこの傾向がさらに著明であった.増殖と分化の面から標識率と標識細胞の所見について得た結果と DNA 代謝からみた結果とは,いずれも悪性化に伴ない一致した変化を示すことが認められ,皮膚実験腫瘍モデルとして用いられることを知り得た.