抄録
d-d系マウスの背部皮膚に化学発癌剤である 20-Methylcholanthrene の 0.3% acetone 溶液 0.3ml を週2回,12週まで定期的に滴下し,皮膚腫瘍の発生過程を20週まで観察した.3週間隔で局所皮膚を生検し,発癌過程,発生腫瘍の組織学的分類および発生母地について組織学的に検索した.腫瘍発生過程は炎症期,肥厚期,腫瘍期とつづき,腫瘍期では papilloma の発生におくれて Keratoacanthomatype squamous cell carcinoma (以下K型SCC)が発生したが,両者間に移動はみられない.組織学的分類では,良性腫瘍として papilloma と proliferating trichilemmal cyst にわけられ,悪性腫瘍は K 型 SCC と spindle cell squamous cell carcinoma の2者がみとめられた.しかしながら,これらの良性腫瘍の一部には異型細胞がみとめられ悪性への potentiality をもつと考えられた. 発生腫瘍の母地は papilloma をのでいて,毛包上皮に由来すると思われた.