日本皮膚科学会雑誌
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蛍光抗体法によるアナフィラキシー様紫斑病の皮膚ならびに腎の検索
安江 隆
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1981 年 91 巻 2 号 p. 149-

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抄録
アナフィラキシー様紫斑病(AP)患者の皮膚および紫斑病性腎炎(APN)患者の腎につき,蛍光抗体法による検索を行った.活動期の AP 患者では,その皮疹部 (新鮮紫斑部)の真皮上層の小血管壁における顆粒状の lgA の沈着か21例全例で認められたのみでなく,AP の好発部位である下腿仲側の無疹部においても同様の IgA の沈着が認められ,前者21例中の16例(76.2%)と,後者6例中の6例(83.3%)では,同様の染色パターンを示す C3 の沈着も証明された.一方,5例の活動期の APN 患者では,その腎糸球体のタサソギウムにおける主として穎粒状をなす lgA の沈着が全例で認められ,うち3例(60.0%)がC3 の沈着を伴ってい仁なお,検索を行った3例中の2例で,腎糸球体の lgA の沈着部位に一致して S 成分の局在が証明されたことが注目された. AP の皮疹を伴っていた APN の2例では,皮疹部の小血管壁における穎粒状の lgA や C3 の沈着も証明された.一方,皮疹の発生がみられなくなり, APN のみが活動性であった5例では,下腿仲側の無疹部における lgA や C3 の沈着も1例を除いては認められなかった. IgM の AP の皮疹部小血管壁への沈着が21例中7例(33.3%)で,また, IgG と lgM の APN の腎糸球体メサソギウムヘの沈着がそれぞれ5例中1例で認められたが,モの沈着の程度は lgA に比し軽度でClq の皮膚や腎への沈着もまれであった.また AP や APN では,血清 lgA 値の上昇が認められることが多かったが,血清 lgG 値や C4 値の異常が証明されることはまれであった.すなわち今回の検索で,AP や APN の診断や予後の判定に際し,蛍光抗体法が極めて有力な武器になりうること,および,AP や APN の病変が,皮膚小血管壁や腎糸球体のメサンギウムに沈着した IgA immunecomplex による alternative pathway を介しての補体の活性化によって惹起されるであろうことを強く示唆する所見がえられた.
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© 1981 日本皮膚科学会
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