抄録
8歳男児光過敏症例(UVS1KOという)について臨床的及び光生物学的に検討した.本症は紫外線(UV)損傷の DNA 修復は正常で,UV 照射後の致死高感受性と DNA 合成回復欠損を特徴とする新光過敏症で,既知の遺伝的光過敏症とは一致しないことがわかった. UVS1KO 患者は1歳頃から短時間日光曝露で急性日光皮膚炎を頻発し,皮膚は乾燥し,2歳で雀卵斑様小色素斑を多発し,7歳頃より顔面に犯状小丘疹発生をみた.しかし身体精神発育異常及び神経学的随伴症状はない.本患者の主症状は色素性乾皮症(XP)に比してかなり軽い. UVS1KO 皮膚線維芽細胞は254nm及び300nm UVに著しい致死高感受性を示すが,XP とは異なり正常な除去修復(不定期DNA合成など)と複製バイパスを示した. この細胞はUV型変異原, 4-iiitroquinoIine-l-oxide(4NQO)とN-hydroxy-acetylaminofluorene (N-OH-AAF)にはXP-A群と正常との中間の致死高感受性を示すが,UV 型の decarbamoyl mitomycin C (DMC)には正常の致死反応を示した.UVS1KO 細胞は X 線とアルキル化剤(methyl methanesulfonate (MMS), ethyl methanesulfonate (EMS), methyl nitrosourea (MNU))及び DNA クロスリンク剤tnitomycin C (MC)のいずれにも正常致死反応を示した.UVS1KO はヌクレオチド除去修復正常にかかわらず,UV 照射後の DNA 合成回復のみの特異的欠損を特徴とした.この特異的現象は UV 照射によって阻害された DNA 複製が回復・再開するのに必要な因子を欠損し,複製再開始に必要なクロマチン構造の回復か起らないことによる.しかし本症の特異的な遺伝的欠損の解明には今後のより詳細な研究を必要とする.