1984 年 94 巻 14 号 p. 1609-
正常ヒト培養線維芽細胞を用い,細胞内外のplasminogen activator inhibitor(PAI)活性を測定した.活性は標準フィブリン平板におけるurokinase或いはvascular activatorによる溶解に対する抑制率で表わした.細胞外PAIは24時間培養にて出現し始め,5日間培養にてurokinase 8U/mlのplasminogen activator(PA)活性を100%抑制し,熱処理に不安定であった.Cycloheximide添加にてPAI活性は低下し,Cycloheximide除去にて活性は上昇した.PAIはde novo合成され細胞外へ分泌されていると考えられた.細胞内でもマイクロソーム分画に高い活性を認めた.PAは本来の血栓溶解作用に加え,分化,組織形成,或いは癌増殖等多様な生物反応に関与すると考えられている.線維芽細胞がPAIを有する事実は線維芽細胞がPAの動的な調節を通じ,様々な生理的,病理的現象に関与する可能性を示唆している.