日本皮膚科学会雑誌
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原発性皮膚形質細胞増多症の2例―特に限局型の存在について―
新田 悠紀子神崎 正紀安江 隆
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1986 年 96 巻 6 号 p. 609-

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抄録

最近,皮膚形質細胞増多症の報告が多くなされている.しかしながら,これらはいずれも皮膚に汎発したものであり,単発性に多クローン性形質細胞浸潤を示した症例の報告はない.われわれは最近,皮膚形質細胞増多症の汎発型の症例と限局型と思われる症例を経験したので両者について比較検討を行った.汎発型症例:59歳男,約18年前より,顔面躯幹上肢に小指頭大,暗赤褐色斑が散在性に出現し,臨床検査にて多クローン性高γ-グロブリン血症が存在した.病理組織学的検査では,真皮に成熟した形質細胞からなる胞巣状の浸潤が認められた.表在リンパ節の腫大はなかった.骨髄像は正常.PAP法にて多クローン性の形質細胞増多症であることが証明された.限局型症例:67歳男.4年前より前額部に母指頭大の浸潤性紅斑があった.病理組織学的検査では,真皮に異型性のない成熟した形質細胞からなる胞巣状浸潤を認めた.PAP法にて,抗ヒトIgG抗体,抗ヒトIgχ鎖抗体,抗ヒトIgλ鎖抗体が共に染色された.以上より,多クローン性形質細胞浸潤と考えられた.なお,所属リンパ節の腫大はなく,骨髄像は正常であった.

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© 1986 日本皮膚科学会
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