日本皮膚科学会雑誌
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混合受身凝集法(Mixed passive haemagglutination)による培養悪性黒色腫細胞に対する抗体の検索
斎田 俊明石井 晶子柴田 洋一
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1986 年 96 巻 6 号 p. 601-

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抄録

抗血小板抗体検出のために柴田らが考案した混合受身凝集法 mixed passive haemagglutination(MPHA法)を用い,悪性黒色腫(M)の細胞表面抗原-抗体系の検出を試みた.5系統のM培養細胞株(M-AS,SEKI,HMV-Ⅰ,HMV-Ⅱ,Endo)についてM患者10例,dysplastic nevus syndrome(DN)患者1例,汎発型の尋常性白斑ないしhalo nevus(V)患者7例の血清を用いて,IgG抗体の検索を実施した.その結果,M患者10例中,SEKI株に対し7例,HMV-Ⅰ株に対し6例,HMV-Ⅱ株とEndo株に対し各5例において各悪性黒色腫細胞に対する抗体が検出された.同様の抗体はV患者でも7例中,SEKI株とHMV-Ⅰ株に対し各3例に,HMV-Ⅱ株とEndo株に対し各2例において検出された.しかし,DN患者や対照健康人では,このような抗体は認められなかった.M患者においては,病期が早く,転移のないものにこの抗体の陽性率が高い傾向がみられた.また,抗ヒトIgG非標識ヒツジ血球を指示血球とするMPHAにおいても陽性反応を呈する血清が見出された.この後者の陽性反応はウシ血球により吸収された.このことからM細胞膜上にはPaul-Bunnellなどの異好性抗原の表現されている可能性が示唆された.

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© 1986 日本皮膚科学会
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