1987 年 97 巻 11 号 p. 1207-
正常ヒト口腔粘膜上皮におけるトランスグルタミナーゼおよびSH基,SS結合の分布を組織化学的に検索した.方法として,前者にはmonodansylcadaverineによる染色,後者にはN-(7-dimethylamino-4-methyl-3-coumarinyl)maleimide(DACM)による染色を行なった.その結果,解剖学的部位により,トランスグルタミナーゼの分布およびSH→SSの変換のパターンに相違のあることが明らかとなった.ケラトヒアリン顆粒が,硬口蓋ではSH,SSを,舌糸状乳頭部ではSH,SSおよびトランスグルタミナーゼを有していた.これらの分布の多様性はそれぞれの粘膜の機能や,その周囲の環境と関連があるものと考えられる.トランスグルタミナーゼ染色およびSH基,SS結合の分布を知るDACM染色は,正常あるいは異常な粘膜の分化を知る上で有用な方法と思われる.