Sporothrix schenckiiを従来本菌の培養に繁用されるSabourand液体培地,Brain-Heart-Infusion(BHI)液体培地又は,新しく今回調整した足蹠角質,albumin,不溶性collagenをそれぞれ窒素源として含むYeast carbone base液体培地で培養し,それぞれの培養濾液中のAzocollを基質として用いたproteinase活性を検討した.Sabourand液体培地やBHI液体培地での培養系からはいずれもproteinase活性は認められなかったが,albumin,又は足蹠角質を含む培地の系からは1週間後にproteinaseの産生を認めた.次いでこれらの中でalbuminを用いて培養した培養液よりこの酵素を分離精製する目的で培養濾液を,限外濾過,DEAE-Sepharose CL-6B,Sephacryl S-200gel filtrationで順次精製し,2種類のproteinasesを同定した.Proteinase(Ⅰ)は完全精製までは至らなかったが,一応分子量約36,500,至適pH6.0のserine系proteinaseであると同定された.一方,Proteinase(Ⅱ)は単離精製され,その分子量39,000,至適pH3.5を示すcarboxyl proteinaseと同定された.両酵素ともhemoglobin,albumin及び皮膚の構成タンパク質であるcollagenや足蹠角質をよく分解することから,産生されたこれら2つの酵素が協同して周囲の結合織を分解することより,菌の真皮内侵襲を可能にしていることが示唆された.
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