デサントスポーツ科学
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Print ISSN : 0285-5739
研究論文
有酸素性運動時における異なる様式での血流制限が血管内皮機能に及ぼす影響
水野 沙洸
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2025 年 46 巻 p. 51-60

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抄録

本研究では,有酸素性運動時における異なる様式での血流制限が,血管内皮機能に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした.若年男性6名 (23±2歳) を対象に,最高酸素摂取量の40%強度にて30分間の下肢自転車運動を以下の2条件下にて実施した:1) 血流制限を連続して行う条件 (連続条件),2) 血流制限を断続的 (5分駆血・5分除圧×3) に行う条件 (断続条件).いずれの条件も,動脈遮断圧の80%に相当する血流制限圧を用いた.運動前および運動中は5分ごとに,心拍数および動脈血圧,血管径,血流速度を測定した.運動前および運動後 (10分,60分) に上腕動脈における血流依存性血管拡張反応 (flow-mediated dilation; FMD) を測定した.運動中,平均血圧はいずれの条件においても増加したが,断続条件では連続条件と比較して,運動開始10,20,30分の時点 (除圧時) に有意に低下した.運動時の血流量と剪断速度の推移に,条件間の差異はみられなかった.FMDは,運動終了10分後に両条件で低下した (連続条件:7.7±1.2% → 3.7±1.4%,断続条件:8.0±2.0% → 4.9±1.6%).運動前から運動終了60分後におけるFMDの変化量は,断続条件 (+1.7±2.5%) が連続条件 (-3.1±1.0%) と比較して有意に高値を示した.以上の結果から,血流制限下の運動により引き起こされる血管内皮機能の低下は,断続的な血流制限を用いた場合,その回復が早まるが,これら動態に剪断速度は影響しないことが明らかになった.

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© 公益財団法人 石本記念デサントスポーツ科学振興財団
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