本研究は,暑熱下運動におけるペルチェ素子による頚部冷却とアイススラリー摂取による体内冷却を比較し,その有用性を明らかにすることを目的とした.健常男性8名を対象に,①体内冷却 (INT試行) と②頸部冷却あり (NECK試行) のランダム化比較試験を実施し,自転車エルゴメーターによる45分間の運動を行った.運動中の直腸温,鼓膜温,平均皮膚温,心拍数,温熱感覚,温熱不快感,主観的運動強度,全身反応時間を評価した.結果として,NECK試行では頸部の皮膚温が運動開始5分後以降で有意に低下したが,運動後半時の直腸温は高値を示した.温熱感覚は運動開始から20分目まで有意に改善されたが,40分目ではINT試行が有意に低値を示した.温熱不快感や主観的運動強度,全身反応時間にも有意な差は認められなかった.これらの結果から,ペルチェ素子による頸部冷却は短時間の温熱感覚改善には有効であるものの,深部体温の抑制には限界があることが示唆された.暑熱障害の予防には,より広範囲の身体冷却や体内冷却を組み合わせる必要があると考えられる.