抄録
重度障害児は身体障害により,発達に重要な役割を果たすおもちゃ遊びが困難である。本稿では,障害が重度であっても影響を受けにくいとされる眼球運動に着目した。主に視線入力装置を用いて,自発的なおもちゃ遊びを可能にするアプリを開発した。本アプリには,重度障害児の因果関係の理解を引き出すことに有効な視覚的インタラクションを導入している。また,重度障害児が見やすい画面に変更する設定を複数用意し,重度障害児の特性に合ったカスタマイズが可能である。重度障害児が視線操作を行った結果を記録するため,視線履歴等により,眼球運動を可視化した。SNSを通じて,アプリを利用する支援学校や療育現場での利用結果や感想をすくいあげて,有効性を高めている。支援の現場では,アプリを重度障害児のおもちゃ遊び以外にVOCA や実空間でゲームを行う手段として活用されていた。本稿では,アプリを利用した取り組みの効果について述べる。