道南医学会ジャーナル
Online ISSN : 2433-667X
卵巣腫瘍茎捻転を疑った内腸骨動脈瘤の1例
佐藤 賢一郎福島 安義
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2021 年 4 巻 1 号 p. 14-17

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抄録

【はじめに】内腸骨動脈瘤は,孤立性に認められる場合と腹部大動脈瘤に合併して認められる場合がある。稀な疾患であり,産婦人科医にとってはあまり馴染みのない疾患でもある。そのため,本疾患が念頭にないと卵巣腫瘍との鑑別診断が困難になる可能性があり得る。今回,下腹痛の主訴で他科より紹介され,当初,悪性卵巣腫瘍の茎捻転を疑った内腸骨動脈瘤の1例を経験したので報告する。【症例】症例は,78歳,閉経不詳,2産で,6ヵ月前より慢性腎不全にて血液透析治療の目的で当院療養病棟に入院中であった。突然の下腹部痛を訴えCT検査を施行したところ,未破裂腹部大動脈瘤および左卵巣腫瘍を疑われ産婦人科を紹介された。視診にて左傍臍正中切開痕を認めたが,既往歴は認知症のため聴取不能であった。左下腹部の腫瘤の存在する部位に軽い圧痛を認めるが反跳痛,筋性防御はなかった。経腟超音波では,子宮は認められず骨盤左側に6cmの内部構造を伴った嚢胞性腫瘤を認めた。CT検査では,左腸骨動脈に接して壁在結節様の所見を伴う嚢胞性腫瘤を認めたが造影効果は認めなかった。臨床所見および画像所見より左卵巣腫瘍で悪性疑い,および茎捻転の可能性を考えた。精査の目的でMRI検査を予定したところ,検査前スクリーニングの過程で左内腸骨動脈瘤が判明した。3D CT画像を作成したところ,卵巣腫瘍と思われたのは左内腸骨動脈より嚢胞状に発生した動脈瘤であることが確認され産婦人科は終診とした。【結論】1)本例の経験より,画像所見で充実性成分を含んだ嚢胞性腫瘤の所見を示し,腸骨血管に接している場合には内腸骨動脈瘤も疑うべきであると思われた。2)産婦人科における内診,経腟超音波検査は内腸骨動脈瘤発見の良い機会であると考えられ,女性には頻度が低く稀な疾患ではあるが産婦人科医も知っておくべき疾患であると思われた。

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