道南医学会ジャーナル
Online ISSN : 2433-667X
卵巣子宮内膜症性嚢胞の悪性化診断におけるMR造影サブトラクション像の有用性について
佐藤 賢一郎福島 安義
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2021 年 4 巻 1 号 p. 7-13

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抄録
【はじめに】我々は,卵巣腫瘍の悪性診断にMR拡散強調像を取り入れているが,卵巣子宮内膜症性嚢胞の悪性化の診断においては,MR拡散強調像で嚢胞内容自体が高信号に描出される場合があり限界を感じていた。また,T2およびT1強調像の両者で中〜高信号を示し充実部分の造影効果の判定も不明瞭な場合がある。今回,悪性の除外にMR拡散強調像に加えて造影サブトラクション像が有用であった卵巣子宮内膜症性嚢胞の2例を経験したので報告する。【症例】症例1は50歳(閉経前),月経痛の主訴で受診したところ,経腟超音波で右卵巣に充実部分を伴う約5cmの卵巣子宮内膜症性嚢胞と思われる病変を認めた。悪性診断の目的でMRI検査を施行したところ,拡散強調像では充実部分の評価が困難な部分を認めたが,造影サブトラクション像では造影される充実部分は認めなかった。現在,ディナゲスト投与による逃げ込み療法を行っている。症例2は47歳(閉経前),子宮癌検診の希望で受診し1週間前からの左下腹部痛と,時々不正性器出血を認めるとの訴えがあった。経腟超音波で左卵巣に充実部分を伴う約3cmの子宮内膜症性嚢胞と思われる病変を認めた。悪性診断の目的でMRI検査を施行したところ,拡散強調像では充実部分の評価が困難な部位を認めたが造影サブトラクション像では造影される充実部分は認めなかった。現在,外来で経過観察中である。【結論】1)卵巣子宮内膜症性嚢胞の悪性化診断において,MR拡散強調像に造影サブトラクション像を加えることにより充実部分の評価が容易となる可能性が示唆された。2)卵巣子宮内膜症性嚢胞の充実部分には非腫瘍性病変もあり得るが,これらの悪性診断にはMR拡散強調像がある程度役立ち,さらにROMA値や場合によりPET/CT検査などを加えることにより診断精度の向上が期待できる可能性が示唆された。
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