道南医学会ジャーナル
Online ISSN : 2433-667X
フルニエ壊疽を契機に発見された直腸癌の1例
郭 紗弥鈴置 真人大原 正範岩代 望小室 一輝高橋 亮大高 和人溝田 知子水沼 謙一木村 伯子
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キーワード: フルニエ壊疽, 直腸癌
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2021 年 4 巻 1 号 p. 42-48

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抄録

フルニエ壊疽は会陰部を主病変とする壊死性筋膜炎で,原因疾患としては痔瘻,肛門周囲膿瘍が多く,直腸癌が原因となることは稀である.今回,フルニエ壊疽を契機に発見された直腸癌の1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する. 症例は70代,男性.食思不振,歩行困難を主訴に当院へ救急搬送され入院となった.入院時,会陰部,右臀部から大腿にかけての腫脹と疼痛,臀部皮膚の壊死が認められ,CTでは同部位に皮下気腫,筋肥厚などを伴う高度の炎症像と下部直腸に腫瘤像が確認された.以上から,進行直腸癌を原因としたフルニエ壊疽と診断した.入院時の全身状態は不良で,敗血症により著明なアシドーシス,急性腎障害をきたしており,ベッドサイドで臀部壊死皮膚の除去,ドレナージを施行後,エンドトキシン吸着,持続式血液透析濾過,抗生剤投与などの治療を開始した.集中治療により全身状態の改善が得られ,入院第7病日,フルニエ壊疽に対する治療目的に腹腔鏡下S状結腸人工肛門造設,右臀部,会陰部のデブリードマン,ドレナージを施行した.また手術の際,直腸腫瘍の生検も行い,直腸癌の確定診断を得た.遠隔転移は認められないが,前立腺,仙骨側へ進展する局所進行癌であり,臀部,会陰部創の状態がある程度改善した時点で,術前化学放射線療法を行う方針とした.入院から約1ヵ月後,腫瘍部を含む小骨盤腔への外照射(45Gy/25fr)+S-1内服による化学放射線療法を開始し,腫瘍の縮小効果が得られたため,初回入院から約4ヵ月後,腹腔鏡下腹会陰式直腸切断術を施行した.病理組織学的検査ではviableな腫瘍細胞は固有筋層内にとどまっており,ypT2N0M0,ypStage I,ypRM0(6mm)でR0切除の結果となった.その後の経過は術後13ヵ月で局所再発をきたし,術後23ヵ月が経過した現在,腹膜転移に対して全身化学療法を行っている.

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