道南医学会ジャーナル
Online ISSN : 2433-667X
当院における90歳以上の超高齢者に対する外科手術症例の検討
廣瀬 奨真三浦 巧阿部島 滋樹阿部 悟
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2022 年 5 巻 1 号 p. 84-89

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抄録

はじめに:近年高齢化に伴い90歳以上の超高齢者に対する手術が増加している。一方で超高齢者は各種主要臓器の生理的機能や予備能の低下、各種併存疾患を有しており周術期合併症のリスクや術後ADL の低下が懸念される。目的:当科での超高齢者に対する手術治療成績および合併症等について検討し臨床的特徴や問題点について検証する。方法:2016年1月から2020年8月までの当科で超高齢者に対して全身麻酔下に外科手術治療を行った41例(男性/女性:12例/29例)について、患者背景(疾患、術式など)および周術期合併症や転帰等についてretrospective に検討した。結果:年齢中央値92歳(90-102歳)、疾患は悪性腫瘍:10例(胃癌:2例、大腸癌:7例、乳癌:1例)、急性腹症の緊急手術:17例(穿孔性腹膜炎:4例、絞扼性腸閉塞:5例、鼠径ヘルニア嵌頓:3例、結腸軸捻転症:2例、大腸壊死:1例、腹膜炎:1例、直腸潰瘍:1例)、良性疾患:14例(鼠径ヘルニア:9例、胆石:4例、直腸脱:1例)であった。術後30日以内の手術関連死:2例(4.9%)、Clavien-Dindo 分類Ⅲ以上の術後合併症:6例(14.6%)、術後DIC:手術関連死の2例、肝不全:1例、sepsis:1例、abcess:1例、SSI:1例)、うち緊急手術は5例。術後在院期間の中央値:17日(0-57日)、術後30日以上の在院死亡:2例(いずれも緊急手術症例)、良性疾患はすべて自宅退院しており、悪性疾患も自宅退院もしくは入所していた施設へ戻ることが可能であった。考察:当院の特徴として、緊急手術を要する急性腹症が多く、手術関連死や術後合併症も緊急手術症例で多かった。これは重篤な急性腹症に対する救命目的での緊急手術が多いため自ずと死亡率や合併症率が高い結果になったと考える。一方で、悪性腫瘍や良性疾患は、待機的かつ計画的に手術遂行が可能で当院では術前栄養療法や運動療法など包括的なプレリハビリテーションを積極的に導入しており、これが良好な経過に寄与した可能性が高いと考えた。結語:超高齢者に対する外科手術治療の適応は未だ議論を有するが、年齢だけが必ずしも手術適応外とする指標にはならないことが示唆された。

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