道南医学会ジャーナル
Online ISSN : 2433-667X
がんゲノムプロファイリングに有用なミスセンス変異有害性予測ツール
池田 健
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2022 年 5 巻 1 号 p. 1-6

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抄録

【はじめに】アミノ酸置換を伴うミスセンス変異の有害性は、ClinVar 等の公開データベースが提供する臨床的エビデンスをもとに確定される。臨床的エビデンスの十分ではない変異や意見の分かれる変異は、ClinVarでは各々VUS(Variants of Unknown Significance)、CIP(Conflicting interpretations of pathogenicity)とラベリングされる。VUS あるいはCIP に相当するミスセンス変異の有害性を予測するためのコンピュータ・ツールが多数公開されている。それらは大きく3つに分類できる。アミノ酸置換障害度をもとにタンパク質機能への影響から予測する方法、進化系統樹の配列保存性によって予測する方法および他のツールのスコア等を統合して予測する方法(アンサンブル法)である。各ツールには、構築に用いたデータや予測モデルの違いによって特徴があり、予測精度にも差がある。本報告では、がんゲノムプロファイリングでの使用を想定し、 dbNSFP(database for nonsynonymous SNP’s functional predictions)によって得られるスコアをもとに、ミスセンス変異有害性ツールの予測精度について検討した。 【方法】FoundationOne Dx がカバーする309遺伝子について、ClinVar に登録されているミスセンス変異をダウンロードした(78,090変異、2021年3月25日~27日)。ClinVar における臨床上の意義が明確であることなどを条件に、5,858変異に絞った。各ミスセンス変異について、35のツールが評価するスコアを、Rパッケージmyvariant を用いてdbNSFP(database for nonsynonymous SNP’s functional predictions、v4.0)より一括取得した。予測精度の検出には、各ツールの構築に用いられたデータとの重複を避けるために、登録年が2019年、2020年あるいは2021年の比較的新しいデータのみを使用した。予測精度は、ROC 曲線(Receiver Operatorating Characteristic curve、受信者動作特性曲線)およびROC 曲線下面積(AUC:area under the curve)によって評価した。全ての統計学的手法はRによった。 【結果】最もAUC の高いコンピュータ・ツールはclinpred であった。他の手法に比べ、アンサンブル法のAUC が高い傾向にあった。

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