道南医学会ジャーナル
Online ISSN : 2433-667X
最大一歩幅の信頼性の検証
佐藤 嶺村上 正和三浦 一志
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キーワード: MSL, バランス, 再現性
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2022 年 5 巻 1 号 p. 49-53

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抄録

【はじめに】高齢化社会に対応すべく理学療法士(以下:PT)分野においても予防PT という領域が設立された。予防事業の活動実績報告は散見されるが介入効果や有用な評価項目に関する報告は少ない。今回、予防事業で活用する評価指標として最大一歩幅(Maximal Step Length:以下MSL)が有用であるかを検証していくための第1段階としてMSL の信頼性を検証したため報告する。 【対象】除外基準を満たした当院に在籍する男性25名(年齢:26±6、身長:170.2±14.8、股下長:78.0cm ±7.7、棘果長:84.9cm ±9.4) とした。 【方法】検査者は経験を有するPT 3名とした。股下長は恥骨結合から床面に下した垂線の距離とした。棘果長は上前腸骨棘から内果の直線距離とした。MSL は身体教育学研究所で開発した方法に準じた。被験者は1回/日の測定とし、2名以上の検査者の同一日の測定を避けた。測定条件は床素材と靴の有無を変えた4条件にて各2回測定した平均値を算出した。統計解析は同一条件における検者内・検者間信頼性、異なる条件における信頼性は級内相関係数ICC(1,1)及び(2,3)を使用しMSL と身長・股下長・棘果長の関係性に関してはPearson の積率相関係数を使用し危険率5%未満を有意とした。 【結果】同一条件による検者内信頼性は高い再現性を認めた。ICC(1,1):0.98(P<0.01)。検者間信頼性も4条件にて高い再現性を認めた。ICC(2,3):0.98~0.99(P<0.01)。異なる条件下における信頼性は床面素材の違いによる再現性への影響は少なく、靴の有無が再現性に大きく影響しているという結果となった。ICC(1,1):0.84~0.85(P<0.01)。MSL と身体的特徴では身長(r=.581)、股下長(r=.406)、棘果長(r=.660)であり、全ての項目に相関が認められたが棘果長でより強い相関が認められた。 【考察】本研究結果から、MSL は検査者による再現性を認め、靴の有無の条件を統一することで身体機能の経時的変化を追求することが可能となることが示唆された。

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