抄録
【背景】高齢者において下肢機能の維持・向上は、フレイルやサルコペニアの予防のみならず、生活の質を維持するためにも重要である。しかし、下肢機能の維持・向上のための運動は、自宅など専門家の指導を受けられない環境で実施しなければならないことが多く、誤用症候群を予防するためにも適切な動作のフィードバック(FB)を受けながら運動を実施することが課題となっている。そこで本研究では、大規模な装置なしに動作のFBを受けながら下肢機能をトレーニングできるアプリを考案し、その性能を評価したので報告する。【アプリの概要】本アプリでは、起立動作に焦点を当て、ウェアラブルセンサ(M5StickC Plus)で動作を測定し、音で動作のFBを行う仕様とした。具体的には、起立動作を音のリズムに変換し、対象者は手本のリズムを聞いたあと、それと同じリズムになるように動きを再現する。手本との近さは、体幹前傾角度、離殿時の勢い、リズムを刻んだタイミングに基づいて、各10点満点の点数として数値化される。そして、各項目の得点が6点未満の時に、それぞれに対してFBが入る。【アプリの性能評価】このアプリが手本との近さを正しく判断できるかを評価するために1名の健常成人を対象として、①前傾が浅く勢いのある起立、②手本に合わせた起立、③前傾が深く勢いの小さい起立の3条件を各10回試行し、総得点がどのような分布を示すかを検証した。【結果・考察】各条件の総得点の中央値と四分位範囲はそれぞれ9.0 (8.0-9.3)、23.0 (19.3-24.8)、17.1 (12.3-18.5)で、対象者の動作が手本から離れている条件ほど点数が低かった。【結論】本アプリは、対象者の起立動作を判断し、望ましい動作へとFBすることが可能である。今後は、対象者数を増やしてより詳細に性能を検証するとともに、高齢者を対象にアプリの効果検証を進めていく。