道南医学会ジャーナル
Online ISSN : 2433-667X
周産期医療の現場から
― 地域での役割を果たし、医療の進展にかかわる ―
片岡 宙門
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2026 年 9 巻 1 号 p. 1-4

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抄録

当院は2008年に総合周産期母子医療センターの指定を受けましたが、1973年に未熟児病棟が設置されて以来、半世紀にわたり実質的に地域の周産期センターとして機能してきました。私は2005年に当院に赴任しましたが、その時点ですでに30年以上先達が果たされてきた役割のバトンを引き継ぐこととなったわけです。

赴任当初から心に決めてきたことがあります。地域の先生方から気安く相談していただけるように心がけ、依頼された患者は絶対に断らない、ということです。そうすることで、地域の周産期医療施設の方々も安心して診療できるし、その背後にいる妊婦とご家族も安心して妊娠出産できることにつながる、と思いやってきました。

私は、周産期医療で最も重要なことは早産予防だと思っています。2011年に道南の早産率を調べたところ、北海道全体及び日本全体とほぼ同程度でした。当院で分娩する妊婦の7割以上は紹介患者です。早産を減らすためには地域全体で取り組む必要があると考え、道南の周産期医療施設に以下の3点を提案しました。1)妊娠初期の細菌性腟症のスクリーニングと治療 2)妊娠20週前後に頸管長の測定を行い、短縮例は早産ハイリスクとして管理 3)前回早産症例への黄体ホルモンの投与 です。そして、2012年に道南の全ての分娩取り扱い施設における妊娠週数別の分娩数の調査を開始し、以後毎年継続しています。日本全体の早産率は37週未満5.6%、32週未満0.71%、28週未満0.25%程度ですが、2012年以降の道南の早産率は、平均で37週未満4.7%、32週未満0.55%、28週未満0.19%であり、全国と比べいずれの区分でも低く推移しています。

 近年帝王切開時の子宮筋層縫合部の癒合不全がまれではないことが報告されており、癒合不全と不正子宮出血、不妊症、以後の妊娠での子宮破裂、癒着胎盤、などとの関連が指摘され、帝王切開子宮瘢痕症と呼ばれています。しかし、その縫合法は多様で癒合不全及び帝王切開子宮瘢痕症を防止する最善の方法はいまだ得られていません。当科では従来単結節1層縫合をしていましたが、時折子宮創部に大きな陥凹を目にすることがありました。 自分のしている縫合方法に疑問をもち、2011年6月から子宮筋層切開創部の評価を開始しました。すると、全症例の約4割に創部の陥凹があり、その中には大きな陥凹も少なからず認められました。予想以上に癒合不全が多いことに衝撃を受け、縫合方法について検討をしました。文献的検討の結果単結節2層縫合がよいのではないかとの結論に至り、前向きコホート研究を行いその有効性を示し、国内外で報告してきました。長期予後を見据えた手技として全国で講演の機会もいただき、現在はさらなる予後改善を目指す臨床研究を進めています。

先天性サイトメガロウイルス(CMV)感染症は、TORCH症候群の中で最も頻度が高く難聴や精神発達遅滞などの神経学的後遺症を起こすことが知られています。その予防のstrategyとしては、全妊婦へのCMV感染予防のための啓発と全新生児の尿中核酸検査によるスクリーニングの組み合わせが最もシンプルかつ有効と考え、2021年から当院ではこの方法で行っています。しかし、全新生児の尿中核酸検査によるスクリーニングは保険診療上認められておらず、ガイドラインでも推奨されていません。私たちはCMV感染予防のための啓発に関する臨床研究と先天性CMV感染症の新生児を同定するためのスクリーニング法に関する多施設共同研究を行い、先述のstrategyが妥当であると考え、その実施を提唱しています。

本特別報告では、道南の周産期医療における自分の役割を果たすこと、日々の臨床の中から生まれた臨床研究を外の世界へ発信し医療の進展に寄与すること、のニ点を軸に、赴任以来約20年間の歩みをお話しさせていただきます。

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